東京地方裁判所 平成7年(ワ)11249号 判決 1996年6月24日
原告
基礎地盤コンサルタンツ株式会社
右代表者代表取締役
森研二
右訴訟代理人弁護士
田多井啓州
同
吉益信治
同
浅井隆
被告
株式会社パソナ
右代表者代表取締役
南部栄三郎
右訴訟代理人弁護士
鈴木誠
被告
甲野夏子
主文
一 被告らは、原告に対し、連帯して、金二九七万一七〇三円及びこれに対する平成七年七月二三日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は、被告らの負担とする。
三 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求
主文同旨
第二 事案の概要
本件は、人材派遣会社である株式会社パソナ(以下「被告会社」という)から原告に派遣された被告甲野夏子(以下「被告甲野」という)が、その派遣先である原告において契約業務を行なうに当たり、金員を不正に領得したとして、不法行為(民法七〇九条、七一五条)に基づく損害賠償請求、ないしは、被告会社に対し、原告との間で締結した労働者派遣基本契約(以下「本件契約」という)第七条(派遣労働者が故意または重大なる過失により派遣先に与えた損害の損害補償条項)に基づく損害賠償請求をした事案である。
一 争いのない事実及び証拠上明らかな事実
1 原告は、土質・地質調査、環境公害調査等の調査研究等を業とする会社であり、被告会社は、労働者派遣事業、事務処理、経理処理、電子計算機処理の請負等を業とする会社である。
2 原告は、被告会社との間で、平成五年一〇月一日、本件契約を締結し、その後同契約に基づき被告会社から社員の派遣を受け、同年一一月二日から翌六年一二月一日までの間、被告会社の派遣社員として被告甲野の派遣を受けた。その際、業務内容は「ファイリング、給与計算、社会保険手続」とされた<証拠略>。
被告会社は、被告甲野を原告に派遣するに当たり、同人との間に、雇用契約を締結した<証拠略>。
3 被告甲野は、右派遣先である原告において、高額医療費・一部負担還元金・家族療養付加金・高額療養付加金・健康診断補助金・宿泊補助金(以下「各種給付金」という)の受入れ及び支払い事務を担当した<証拠略>。
二 争点
本件の主な争点は、①被告甲野は別紙使途不明金明細表(以下「明細表」という)記載の合計二六六万六七〇三円を不正に領得したか(以下「本件領得」という)、②本件契約に基づき被告甲野が原告において担当すべき仕事の範囲に現金業務が含まれるか、③被告甲野の本件領得行為は被告会社の職務の執行につきなされたものといえるか、④被告会社は、被告甲野に対する使用者の選任及びその職務執行の監督につき相当の注意を尽しているか、⑤原告が被告甲野に現金取扱いをさせるについて原告に過失があったとして過失相殺されるべきか、⑥<省略>である。
右各争点に対する原告及び被告会社の主張は次のとおりである。
1 原告
(一) 原告は、本件契約に基づき、被告会社から被告甲野の派遣を受け、同人に対し、派遣業務内容である社今保険手続の一環として各種給付金の手続事務を担当させていたところ、保険金未支給の苦情が相次いだため調査した。右調査の結果、被告甲野が健康保険組合から支給を受けた明細表記載の不明金を領得した事実が明かとなった。
(二) 派遣業務内容である社会保険手続の中に現金業務が入ることは当然である。一般にも当然であるし、原告の本社総務の社会保険手続担当者は各種給付金手続において健康保険組合から原告口座に振り込まれてくる還付金・補助金を引き出し、原告の本社従業員に配布し、または本社経理に入金する仕事を行なうから(以下「本件現金取扱い業務」という)被告甲野が現金の取扱いをすることは必然であり、社会保険手続と切り放せない業務なのである。
また、原告は、被告会社の派遣責任者である大角元康(以下「大角」という)からの要求により、派遣社員に担当させる業務内容を月間及び年間業務の流れとしてまとめた書類を大角に渡し、同人に対し、右社会保険手続の中で健康保険組合からの諸給付金を扱うことを説明しているし、被告甲野の前任者で被告会社から派遣を受けた社員二名(期間は平成五年一〇月一日から八日と一九日から二七日)も被告甲野と同様の現金業務をしていたが、被告甲野の派遣の際に社会保険手続きに現金業務が入るか否かの照会もなかったし、大角は、被告甲野が原告に派遣されて後一週間に一回程度就業場所を訪れ、被告甲野から派遣業務の内容について報告を受けていたのに、契約業務を逸脱しているとか、派遣単価を引き上げるとかの申し出はなく、唯一被告甲野にワープロ文書の作成業務を依頼したところ、被告甲野及び大角から、ワープロ業務が社会保険手続業務に入らず契約業務外であるとの指摘を受けたのであった。
以上の経緯からして、被告会社は社会保険手続業務に前記のような現金業務が含まれることを了解していたはずである。
(三) 被告会社は、原告への派遣社員として、被告甲野を雇用し、原告に派遣して本件契約に基づき合意された内容の仕事を行なうことを指示、命令して行なわせ、派遣後は一週間に一回程度の割合で大角が原告を来訪し、被告甲野から業務内容の報告を受け、被告甲野を監督していた。雇用の点でも、原告が職業紹介を受けた場合の料金よりも遥かに高額の派遣料を被告会社に支払い、同会社は、原告から支払われた派遣料から被告甲野に対し給料を支払っていた。
労働者派遣契約においては、人材の派遣及び契約に基づく業務の遂行が契約の内容なのであるから、その給付につき不履行があれば、債務不履行責任が生じることは当然である。本件契約第七条は、派遣社員が派遣業務の遂行に伴なって原告に損害を与えた場合の債務不履行責任を、「派遣社員が故意または重大な過失」に限定し、軽過失の場合を免除している規定である。
そして、原告は、被告甲野の派遣に際し、被告会社に対し、被告甲野の履歴書を求めたところ、同会社から本件契約は労務の提供だけを目的とするからその必要はないとして拒否されたのである。
以上によれば、被告甲野が派遣先である原告で派遣業務を行なうにつきなした行為が、民法七一五条の事業の執行につきなした行為に該当することは明かである。
(四) ところで、被告会社が、被告甲野の選任及び業務執行の監督について相当の注意をしたことはない。被告甲野の選任からして杜選であり、住民票の提出も身元保証人も立てさせず、履歴書だけで採用している。そのため、本件領得の発覚後に被告甲野を探そうとしたが住所、本籍、親族等何ら特定できなかったのである。
(五) 原告では、被告甲野に本件現金取扱い業務を担当させている間、監督者の須呂健介(以下「須呂」という)が、健康保険組合から振り込まれてきた金額と月々の引出額の一致をチェックし、社会保険手続事務における還付金等の支払いに遺漏のないようにしており、右還付金等の支払いに遺漏があれば従業員から直ちに苦情が生じ、右還付金等の支払いのなされていないことが直ちに発覚するから、本件現金取扱い業務の担当者が右発覚を免れて還付金等を領得できないようになっているし、過去に右現金取扱い業務の担当者による還付金等の不正領得はなかった。
また、本件現金取扱い業務は、会社内部における少額の金銭支払いを多数人に行なうもので、これを上司が一々チェックするのであれば、二重に手間がかかり、被告会社から労働者の派遣を受けた意味がないから被告甲野の本件現金取扱い業務をその業務における上司が一々チェックしないことが原告の過失となるものではない。
ところで、被告甲野の本件領得は、発覚されないように巧妙な手口を用いて行なわれたものであり、被告甲野の派遣期間終了後に発覚するように仕組まれたものであるから、原告に過失はない。
(六) <省略>
2 被告会社
(一) 被告甲野が本件領得をしたことは知らない。
(二) 本件契約に基づく被告甲野の業務内容には、現金の取扱いは入っていない。現金取扱いは特殊業務であり、右業務を取扱う労働者を派遣するとすれば、それ相応のリスクを負担するから、被告会社では特別信用のある経験豊かな労働者を派遣する。また、当該労働者の派遣単価も当然高額となる。
本件領得があったとしても、それは原告が契約業務外の現金取扱い業務を被告甲野にさせて生じたのであるから、その損害は原告が負担すべきであり、被告会社には民法七一五条の使用者責任も本件契約第七条の契約責任も生じない。
(三) 原告は、被告甲野に現金の取扱いをさせるにつき、被告甲野が勤務した一年一か月の間、同人の上司に当たる者が全くチェックをしていなかった。どんな企業でも、現金の取扱いについては必ず上司等のチェックを受けているのであり、原告が被告甲野の現金取扱いをチェックをしなかったのは企業における現金取扱いの常識を無視している。原告が上司等にチェックさせていれば、仮に被告甲野が本件領得をしたとしても直ちに発見できた筈であるから、原告には重大な過失があり、過失相殺されるべきである。
(四) 労働者派遣契約上、派遣社員は、派遣先の監督に服する義務があるから、派遣先は派遣社員を指揮、監督してその業務に従事させることになっている。派遣元が、派遣社員を直接監督できる立場にないことは業務の場所その他の状況から明かである。
従って、当初からその行状に問題があることが明かな労働者を派遣する等の事情があるのならともかく、一般に登録されている労働者を派遣する場合においては、派遣先での労働者の監督責任は派遣先にある。
特に、本件のように派遣先である原告が派遣社員である被告甲野に現金取扱いという契約業務以外の業務をさせる場合には、原告が、被告甲野を監督すべき責任がある。
被告甲野は、派遣に際し、右の行状に問題を有する事情のある労働者ではなかった。従って、被告会社には、民法七一五条の使用者の選任及びその事業の監督につき相当の注意を尽くしている。
第三 当裁判所の判断
一 争いのない事実及び証拠上明かな事実並びに証拠(<証拠略>)、弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
1 原告は、本件総務課勤務で社会保険手続業務を担当していた女子社員菊池が産休に入るため、その代替要員として被告会社に人材派遣を依頼することにした。そこで、原告の総務課長であった須呂は、平成五年九月二〇日、被告会社の人材派遣担当者である大角に、社会保険事務を独力で担当できる人員を補充したいと伝えて人材派遣の申し出をした。
そして、原告を訪ねた大角に対し、菊池と須呂が、派遣業務のうち社会保険手続の内容は各種給付金の受入れ仕分け、支払手続であることを、菊池の作成した年間スケジュール、月間予定表を示しながら説明した。その際、本件現金取扱い業務が含まれることの概要も説明したが、大角から特に現金取扱いについての確認や現金取扱いはさせないで欲しいとの申し出はなかった。
2 原告と被告会社は、平成五年一〇月一日、本件契約を締結した。
被告会社は、以前の労働者派遣契約に、「派遣社員には金銭の取扱いをさせないこととする」との条項を入れていたが、本件契約書には同趣旨の条項を規定していなかった。そして、大角からもその旨の話がなかったため、須呂は、被告会社が派遣労働者に派遣業務に関して少額の現金の取り扱いをもさせないことにしているものとは考えもしなかった。
本件契約締結と同時に、被告会社から八日間の契約で派遣労働者として岡が派遣され、同人に対し、菊池が業務内容を説明した。その後、派遣労働者は平成五年一〇月一九日から大石に代わったが、大石は本件現金取扱い業務についての説明を受け、その派遣期間(同年一〇月一九日から二七日)「健康保険給付費支給について」と題する書面を作成し、本件現金取扱い業務を担当した。
3 被告会社は、平成五年一〇月二八日以降、大石の都合により同人を原告に派遣できなくなったため、派遣希望者登録名簿から社会保険業務ができるということで被告甲野を派遣社員とすることにし、同人と雇用契約を締結して、同年一一月二日から翌年一二月一日の期間、同人を原告に派遣した。
被告会社は、被告甲野を右登録名簿に登録する際及び右雇用契約を締結する際、同人から履歴書の提出を求めて面接したが、戸籍謄本や住民票の提出を求めて確認するなどしなかった。被告会社では登録派遣社員が一二万余人いるが同様の扱いをしている。
原告が被告会社に支払う被告甲野の派遣料は平成五年一一月二日から翌年三月三一日までは月額三五万一〇〇〇円であり、同年四月一日から一二月一日までは月額三五万四〇〇〇円であり、被告会社が被告甲野に支払う賃金は時給一六二〇円(契約労働時間七時間で月曜日から金曜日までの勤務であったから月二〇日間勤務の場合は額面給与月額二二万六八〇〇円)であった。
被告甲野は、須呂から派遣業務内容である社会保険手続及び本件現金取扱い業務について説明を受け、平成五年一一月から社会保険手続の一環として本件現金取扱い業務を行なった。
しかし、被告甲野から現金取扱いの業務が契約外業務であるとの申し出はなかったし、同人の前任者の大石からもその旨の申し出はなかった。
そして、大角は、被告甲野が派遣されて後暫くは週一回程度、その後は月一回程度同人の仕事振りを見に来ていた大角からも、被告甲野が本件現金取扱い業務を行なっていることが契約外業務であるとか、現金取扱い業務をさせないで欲しいとかの申し出はなかった。
ただ、須呂が被告甲野に対し、ワープロ業務を依頼すると、同人から契約外業務であり、OA料金となると言われたことがあった。
4 被告甲野は、本件現金取扱い業務として、原告が加入している東京都設計事務所健康保険組合から原告本社の銀行口座に、各種給付金が一括して毎月三回総額二〇〇万円位の還付金、補助金が振込送金されると、予め右組合から送付されている本社及び各支社受給者(従業員)分が一体となっている個人別内訳書(健康診断補助金は各支社分のみ)から本社受給者分の内訳書と支社受給者分を転記して内訳書を作成しておき、月一度、須呂の了解を得て右銀行に行き、予め作成してある右内訳書に基づき、一部を各支社への送金分としてまとめて本社経理の口座に振り込み、残りの本社で直接受給者に交付する約二、三〇万円を銀行口座から引き出して持ち帰り、その日の内に本社の受給者に配付していた。
原告本社で配付を受ける受給者は一〇人位であったが、被告甲野は、隣に経理の担当者もいる中で、自分の机の上で前記のとおり作成した右内訳書に基づき振り分け、受給者各人に配付して領収印を貰っていた。
須呂は、健康保険組合からの振込金額と被告甲野の引き出した金額を確認していたが、具体的な支社分の送金金額及び本社の受給者に対する配付金の合計額の確認はしていなかった。
宿泊補助金の場合も同様であった。
原告は、従業員六五〇人規模の会社であるが、社会保険手続については従来から受給者に現金で交付しており、担当者は被告甲野と同じ業務を行ない、右業務に対する上司等の監督は同じであったが、過去に不正領得という事故はなかった。
5 被告甲野の派遣終了後、原告の社員から、各種保険金の不支給の苦情が出て調査したところ、一部は被告甲野が原告に派遣されて数か月後から、多くは派遣終了直前、高額療養費等については、健康保険組合からの個人別内訳書から、本社分及び支社分の各内訳書が作成されるに当たって合計一三回、一部の者の転記がなされず虚偽の内訳書が作成され、その内訳書に基づいて、本社分については該当受給者に現金が支給され、支社分については本社経理に振り込まれ、健康診断補助金については、健康保険組合から送付された還付金振込内訳書に基づいて各支社分の内訳書が作成されるに当たり合計一三回、一部の支社の転記がなされず虚偽の内訳書が作成され、その内訳書に基づいて本社経理に振り込まれ、宿泊補助金については、内訳書に転記されずに不明の分が二回分あり、以上総額二六六万六七〇三円が不支給の各種給付金の不明金として発覚した。
そこで、原告では、右調査に基づき、被告甲野の不正領得によるものと判断し、支給を受けなかった従業員に対して直ちに補填して支給した。
6 ところで、各種保険金の給付は、従業員が受給者であり、給付の有無が予測できることから支給されるべき金額が支給されない場合には、通常、速やかに発覚するはずであるが、被告甲野は、高額療養費等については毎月支給される者を選び、領得後次月か次々月に補填したため、派遣終了月間近に被害が集中し、健康診断補助金は計算が複雑であったことから不支給の事実が発覚しにくく、宿泊補助金については派遣終了月の分が領得されたことから被告甲野の派遣終了後に発覚したのであった。
7 <省略>
被告甲野は、被告会社に提出した履歴書の住所(最後の住所地)に原告への派遣が終了した平成六年一二月まで居住していたが、同月末までに転居し、その後行方不明であり、同人は右住所地へ転入届出をしていなかったため住民票は存在せず、同人の本籍、転居先等同人の所在を確認するすべがない状態にある。
8 原告は、被告会社に対し、本件契約に基づく派遣に際し、被告甲野の住民票の提出を求めたが、原告と被告甲野との間には雇用関係がないとの理由で拒否された。
二 <省略>
三 以上の認定事実及び前記争いのない事実と証拠上明らかな事実並びに右検討を総合して、前記争点を判断する。
1 争点①については、各種給付金の支給手続及び原告の調査結果、被告甲野の派遣終了後の所在不明等に照らすと、被告甲野による本件領得の事実が認められる。
2 争点②については、社会保険手続に付随しての本件現金取扱い業務程度の現金業務は予測できること、本件契約締結に際しての原告側の派遣業務についての説明、本件契約書に現金業務の除外規定がないこと、原告への派遣労働者が本件現金取扱い業務を行なっても被告会社や派遣労働者から何らの申し出もなかったこと等に照らすと、本件契約に基づき被告甲野が担当すべき仕事の範囲に現金業務が含まれていると解される。
3 争点③については、右のとおり被告甲野の本件現金取扱い業務が本件契約に基づく業務内容であること、同人は、被告会社に雇用されて原告へ派遣され、同会社から給与の支払いを受けていたこと、同会社の派遣担当の大角が定期的に原告を訪れ、被告甲野の仕事振りを見て監督していたこと、実質的な派遣料(派遣料から同人への給与を控除した額で給与の約三分の一にも及ぶ)は、被告会社による派遣労働者の指導監督の対価の意味もあると考えられること、同会社は、原告から被告甲野の住民票の提出の要請があったのに拒んだこと、本件契約第七条で損害補償を規定すること等からすると、同人の本件領得行為は、本件契約に基づく派遣業務としての被告会社の職務の執行につきなされたものと解される。
4 争点④については、以上認定し検討した結果及び左記5に照らすと、被告会社において、被告甲野の選任及びその職務執行の監督について相当の注意を尽くしているとは到底言えない。
5 争点⑤については、前記認定事実によれば、被告甲野の前記内訳書への転記が正確になされているかについて、同人の派遣先の上司である須呂等の監視、確認がその都度厳格になされていれば、本件領得を未然に防げた可能性が高いと考えられるけれども、他方、各種給付金は、社内従業員が支給の額や時期を予測できるものが多いため、領得された場合ほどなく苦情が出されることから(本件領得も受給該当者の苦情が発覚の端緒となった)一定の監視が及んでいると言えること、前記内訳書への記載も経理担当者が隣にいる机の上で作成されていること、過去において各種給付金の領得の事故はなかったこと、右事情において、故意に各種給付金を領得した被告甲野に対する本件損害賠償請求につき原告の過失相殺を認めるのは相当でないところ、被告会社は、被告甲野から住民票の提出も受けないで雇用して原告に派遣し、派遣後は右3のとおり被告甲野を監督し派遣料を得ていたことに照らすと、被告会社に対する損害賠償請求につき原告の過失相殺を認めるのも相当でない。
6 <省略>
四 以上によれば、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用については民事訴訟法八九条、九三条を、仮執行宣言については同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官髙橋光雄)
別紙<省略>